ベルギー人建築家、オーギュスト・ペレによって、1903年(明治36年)、パリのフランクリン通りに鉄筋コンクリート造のアパートが建てられてから一世紀を経た、近代集合住宅の歴史。
日本では、1916年(大正5年)長崎軍艦島の集合住宅「30号棟」を皮切りに、同潤会アパート、晴海高層アパートなどが建てられましたが、多くは姿を消してしまいました。
建築計画、まちづくりを専門に研究している著者は、自称「解体立会人」として、日本の近代集合住宅黎明期に建てられた集合住宅を、著名建築家が建てたものから、作者不詳建築年不詳のものまで、20年近く(初版発行の2006年時点)行ってきた実測調査や住人への聴き取り調査を、簡単にまとめた本です。
著者は、
“「時間が経つことは、価値が無くなっていくことである」という悲しい現実があるのである。そのせいもあって、日本の都市は常に記憶喪失の危機に瀕している。”
“時間をかけた日々の暮らしの蓄積の中でこそ、住宅という建築物は評価され続けなければならないのではなか。”
と本書の中で言っています。
本書で紹介されている集合住宅
・長者町二丁目第二共同住宅(昭和35年)
・日東アパート(昭和26年)
・同潤会山下町普通住宅(大正13年)
・同潤会大塚女子アパートメント(昭和5年)
・奥野ビル(昭和7年頃)
・東光園アパート松月荘(昭和4~10年頃)
・同潤会清砂通りアパートメント(昭和2~4年)
・山手234番館(昭和2年)
・大阪市営下寺・日東住宅(昭和6~9年)
・広潤荘(昭和3~8年)
・横浜市稲荷山下住宅(大正14年)
・九段下ビル(昭和2年)
・竹平アパート(昭和10年)
・同潤会江戸川アパートメント(昭和9年)
・求道学舎(大正15年)
・烏山第一団地(昭和33年)
・西長堀アパート(昭和33年)
・原宿アパートメンツ(昭和33年)
・トヨクニハウス(昭和7年)
・宮益坂アパート(昭和28年)
・三田東急アパート(昭和32年)
・同潤会青山アパートメント(大正15年)