アパートのすべて
宮田慶三郎著 東京コープ社長 金剛出版 1964年(昭和39年)8月20日発行
ヴィンテージマンション好きが集うと、必ずといっていいほど話題に上る伝説のヴィンテージマンション「コープオリンピア」。1965年の分譲当時は1億を超える部屋もあった超高級マンション。表参道のケヤキ並木との調和のとれた外観と、ファッションや文化の発信地原宿で、衰えることの無い存在感を見せ続けてきたマンションです。
もうひとつ忘れてはいけないのは、中野にあるコープブロードウェイ。現在はサブカルチャーの文化発信地として人気のあるブロードウェイですが、5階以上は芸能人や著名人が住んだ、高級マンションです。
東京オリンピックの1964年前後のマンション黎明期にあって、コープオリンピアやコープブロードウェイなど、現在ヴィンテージマンションといわれる、数々の高級分譲マンションを手掛けてきたのが、東京コープの社長宮田慶三郎。
医学博士として訪れたワシントンで、スーパーやレストラン、ランドロマット(ランドリー)や屋上庭園といった共同施設を併設した、「近代的アパート」の生活に魅了され、その後ヨーロッパ各地でアパートについて研究し、同様の近代的なアパート生活を日本にも根付かせようとした、高級分譲マンション開発の草分け的な存在です。
アパートのすべては、宮田慶三郎が、コープオリンピアとコープブロードウェイの建設中に書いた著書です。
宮田が理想とした近代アパートやそこでの生活スタイルだけでなく、当時の賃貸住宅事情やアパート経営について、金融機関の融資状況や税金なども書かれていて、当時の不動産事情を知る資料としても一読の価値があります。
コープオリンピアにある中華料理店「南国酒家」も宮田慶三郎の創業。宮田慶三郎が考える、コープオリンピアと南国酒家の関係性も面白い。
コープオリンピアに、温室や温室庭園のあるメゾネットタイプの部屋があるとは、はじめて知りました。もしまだそのまま存在するのであれば、取材させてほしい部屋です。